錦という名の香水 向田邦子『男どき女どき』
№18 毎月一冊、本を読む。
1月は向田邦子の『男どき女どき(おどきめどき)』を読んだ。
何事も成功する時を男時、めぐり合わせの悪い時を女時というそうだ。
何者かによって台所にバケツごと置かれた一匹の鮒が、やがて男と女の過去を浮かび上がらせる「鮒」。
毎日通勤の途中にチラリと目が合う、果物屋の陰気な親父との奇妙な交流を描く「ビリケン」。
四編の小説とエッセイ。
話自体はなんてことない、日常を切り取ったような短編である。
が、時代の空気が息づいている。人々が当たり前に【昭和】を生きている。
昭和の暮らしが見える。
そういうところが好きだ。
エッセイの中で、資生堂の【錦】という香水の名前があった。
向田邦子は新しい香水を試みるのに独特の方法があったようだ。
まず耳たぶに一滴乗せる。
飼い猫が素知らぬ風を装って近付いてきて、香りを確かめる。
耳元で「フッフッ」と鼻息が聞こえる。(飼い猫あるある)
気に入らなければくしゃみをし、気に入れば頭突きをするという。
安物の香水はお気に召さないという気高い猫のお気に召した香り、【錦】。
今は廃盤となって久しいらしい。1973年頃の香水だそうだ。
定価が当時の価格で4,000円。現在だと1万円前後くらいか。
パウダリーフローラル系の香りだったらしい。
資生堂のパウダリーフローラルは昭和のお母さんの鏡台の香りとよく言われる。
白粉のような香りだ。私の好きな香り・・・。
いつか確かめてみたいな。
あっ、またひとつリストが増えたね♪